私のヨガの先生のMさんは、
ハリケーン・サンディの停電が起きた時には
我が家の近所のアパートの14階にある
彼氏の家にいたそうだ。
ボーイフレンドの家には、
当時1歳になったばかりの
やんちゃなラブラドルリトリバーがいて
ちょうど、お散歩に出かけようとしていた矢先に
停電が起きてしまったのである。
ニューヨークには、
前の年にも大きなハリケーンが来ていたのだが
ハリケーン、ハリケーンと騒がれた割に
ほとんど被害がなかったこともあり、
Mさんと彼氏は、他のニューヨークの人々と同じように
今年も同じだろうとタカをくくっていて
殆ど何も用意をしていなかった。
1920年代に建てられたその建物は
非常に天井が高いので、14階とはいえ、
日本だったら、余裕で20階分以上の高さがあるだろう。
暗い階段を上り下りするのは、めんどくさいが
彼のわんこは、家の中では決しておしっこをしないので
外に連れて行かなければ、膀胱炎になってしまう。
懐中電灯は、用意していなかったけれど、
Mさんは、私が持っているのと同じ種類の
動物型のちっこい懐中電灯(のようなもの)を持っていた。
私のはカエルだけれど、Mさんのはネコだか何かで
ボタンを押すと、申し訳程度の灯りがついて
ボタンを押している間、
みーみーみーみーみーみーみーみーみーー っと
うるさく鳴き続ける、という代物である。
昨今のスマートフォンは、懐中電灯機能がついているけれど
停電がいつまで続くかわからない時に
そんなことで電池を使い切ってしまうわけにはいかない。
へなちょこの懐中電灯(のようなもの)でも、
まっくらな階段を下りるのに、
何もないよりはマシだろうということで
その懐中電灯(のようなもの)を持って
わんこをつれて外に行く事にした。
んが。
産まれてまだ1年しかたっていないわんこ
体だけは、やけに巨大だというのに
それまで、階段というものを
1度も降りた事がなかったんである。
いざ、まっくらな階段を降りようとしたら
怖がってしり込みをしてしまい、
うんともすんとも、動かなくなってしまった。
なだめてもすかしても、
ぐいぐいひっぱっても、オヤツでつっても
巨大なわんこは、
決して、決して、階段を降りようとはしない。
しょうがないので、
Mさんの彼氏が、
40キロ以上あるわんこを抱きかかえ、
Mさんが、彼氏の足元を
へなちょこの懐中電灯(のようなもの)で照らして
14階分
みーみーみーみーみーみーみーみー、
と、降りたのだそうだ。
無事に外でおしっこを済ませた後、
降りるのは怖くても
さすがに登るのは大丈夫だろうと思っていたら
わんこは登るのも断固拒否。
またもや、14階分
みーみーみーみーみーみーみーみー、
みーみーみーみーみーみーみーみー、
みーみーみーみーみーみーみーみー、
みーみーみーみーみーみーみーみー、
と、わんこをかついで、家に帰ったらしい。