これまでのお話は、こちら。
トレンチコートの男性達は
オットと握手をすると
私に手を差し出した。
「来てくださってありがとう、スミス夫人。(仮名)」
握手をしつつ、私の全身には鳥肌が立ち、
心臓がばくばくしていた。
私は、オットがくる事を
D氏には告げていなかったのだ。
けれども、D氏は、
オットが来ていることに驚かなかったどころか
オットの顔も、私の顔も知っていたのである。
D氏というのは一体誰なのか。
D氏とそのパートナーだという人物は
国税局の捜査官であるというバッヂを取り出して
私達に見せた。
テレビの中では、捜査官がバッヂを見せると
水戸黄門の印籠のような効果を発揮して
それを見た人物は、反応をするのだけれど
それが本物のバッヂかどうかなんて、
ちらっと見ただけではわからないし
大体じっくり見たって、素人にはわかるはずがない。
100歩譲って、彼らが本物の捜査官だったとして、
家ではなく、外で会ってもいいと言ったところをみると
切羽詰った強制捜査ではないのだろう。
私は脱税はしていなかったし、潔白のはずである。
それでも、あまりの不安に
心臓が、喉にひっかかっているような気分だった。
D氏はゆっくり話し出した。
「○○年から○○年にかけて、アッパーウェストサイドの
◆丁目の◆番地のアパートに住んでいましたね。」
D氏は、私に家賃をどのように支払っていたか、
大家に会った事があるか等々の
いくつもの質問をした。
そのアパートは、学生時代に
友人と2人で借りて住んでいたアパートだった。
私は、家賃は小切手で払っていたこと、
大家とは、1度会ったことある事など
時々、オットの顔を見ながら、ゆっくり説明した。
つづく。
全然関係ないクラゲ電灯。