これまでのお話
その1
その2
D氏は、私が契約書やら支払済小切手やらを
保管しているかどうかを聞いた。
そのアパートに住んでいたのはずいぶん前のことだったけれど
そのアパートに関する書類は
全部、同じフォルダーに突っ込んだまま
ファイルキャビネットに入れてあるはずだった。
私がうなずくと、
FBIの捜査官も交えて話を聞きたいので
次の週に連邦ビルの中にある
国税局に出頭して欲しい。
と言った。
国税局の事務所で会うということは
つまり、D氏は本物の
国税局の捜査官だということである。
それにしても
FBIとは大げさなこってある。
次の週、約束の時間の20分前に
連邦ビルに出頭した。
1階で、セキュリティーチェックを受け
指定された階まであがり
エレベーターが開くと
ずいぶん早く着いてしまったというのに
D氏が、目の前に立っていた。
セキュリティチェックを受けた時に
行く部署を申告したわけではないので
D氏は、セキュリティカメラかなにかで
私が来るのを見張っていたに違いない。
スターバックスには何人もの人物が出入りしていたのに
オットの顔が一発でわかったのも
私の顔を知っていたのも
全部、何らかの方法で調べていたに違いない。
自分の犯した犯罪ではないとしても
自分の一挙手一投足が見張られているというのは
何とも気味の悪いことだった。
D氏は、FBIの捜査官だというF氏を紹介し
小さな取調室のようなところに私を連れて行った。
F氏もこれまた絵に描いたようなFBIの捜査官だった。
取調室は、机と椅子がおいてあるだけだった。
人物といい、取調室といい
なんだか、本当にテレビで見るものにそっくりだったので、私は
「人の格好も、場所も、テレビか映画みたいですねー。」
と、ものすごく余計な事をブツブツいいながら、
中に入って、勧められた椅子に座った。
もちろん私は、少しは緊張はしていたけれど
相手が、本物の国税局の人であることや
自分に関する捜査ではないことで安心して
いつもの自分に戻っていたのである。
私は思い切りニコニコしながら
「エレベーターの前で待っていらっしゃったりするし
オットが来る事も知っていらっしゃったし
私の電話、盗聴してました?」
と、かなーり余計な事を聞いてみた。
D氏は、にこやかに笑って
「義務を果たしているだけですよ。」
と、言い、それ以上のことは言わなかった。
D氏は、取調室の近所にいた女性に
コーヒーを持って来てくれないかと頼んだが
その女性はとても忙しかったのでツレなくされ
しょうがないので、自分でいそいそとコーヒーを入れて
「僕は、ここでは権力ないんだよねー。」なんて言いながら
私と、FBIのF氏に持って来た。
そんな様子も、どっかのテレビ番組の
しょぼくれた刑事さんのようだった。
D氏は、コーヒーをおきながら
その前の日に話題になっていたニュースについて話し始め、
私と、F氏と、D氏は、しばらく雑談をしてから
やっと本題に入った。
「あのアパートの大家を逮捕する予定なんだけれどね。」
つづく
今年のアジサイの図。
4 件のコメント:
えぇ?エープリルフールでも、
夢で見た話でもないんですね?
う~む、これは益々面白くなってきました。
ドキドキからワクワクです。
トレンチはいいもんだったのかぁ。
カプメイさま
オットはぐるではありませんでした。 笑
おおお まるで映画かテレビドラマの世界ですね~~。
そういう貴重な体験、願ってもできるものじゃない!!
一部始終ビデオに録りたかったですね~~!(笑)
ぽてとさま
本当に、テレビみたいだなーっと思いました。
テレビが真似してるんだと、
D氏は言ってましたが
自分でもある程度は
意識してるんじゃないかと。 笑
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